「ほどけない体温」スピンオフ。
高垣凛音ちゃん4歳の王子様「忍くん」のお話です。
5がつ12にち はれ
しのぶくんとすいぞくかんにあそびにいきました。
おおきいかっこいいおさかなもきらきらのきれいなおさかなも、あしかさんやあざらしさんやぺんぎんさんも、たくさんたくさんみれました。
しのぶくんはえいのうらのにこってしてるおかおがかわいいからすきっていってました。えいがすいそうのとこまでちかづいてくると、いっしょにおててをふりました。
りんはくらげのすそがふわふわぁってしてるところがどれすみたいできれいだなっておもいました。
すいぞくかんのおねえさんが、らっこはねるときにまいごにならないようにこんぶでぐるぐるまきにしてねるけど、すいぞくかんにはこんぶがないからおててをつないでねるんだよっておしえてくれました。
りんもしのぶくんとでーとするときはまいごにならないようにしのぶくんにぎゅってしてもらうので、りんとしのぶくんもらっこさんみたいだなっておもいました。
しのぶくんがおててをぎゅってしてにこにこわらってくれると、りんはうれしくてたのしくてちょっとはずかしくってえへへってなります。
しのぶくんはおさかなのびんせんをかってくれたので、こんどのおれいのおてがみはこれでかこうとおもいます。
りんはしのぶくんのことがだいすきです。
色とりどりの色鉛筆ときらきらのラメのペン、お気に入りのシールでめいっぱいにかわいくデコった日記のページを眺めながら、満足げににっこり笑顔を浮かべる。
ママに買ってもらった絵日記用のノートはチョコレートみたいなこっくりした深いこげ茶色に金色のくるくるのリボンのもようがついていて、幼稚園で使っているねこちゃんの絵の描いてある連絡ノートよりもうんとおとなっぽくて、大人のお姉さんの使うノートみたいに見えるところがすごくお気に入りだ。
「遠足や行事の思い出や、そのほか何か楽しいことやすてきなことがあった時には先生に教えてください」
幼稚園から渡されている連絡ノートにはいつも丁寧なお返事が書いてもらえるのが楽しいけれど、凛音はもう四歳の立派なレディなので、どんなに大切でうれしい思い出でも、先生にないしょにしておきたいことだっていくらでもある。
「りんはとうこ先生がお返事してくれるの大好きなの。でもね、すっごく大事なことだから先生にはないしょにしてたいこともあるの。でもね、ないしょだから書かないことにしてたらわすれちゃいそうでかなしくなっちゃうの」
パパのいない時にこっそりもちかけてみた相談へのママの出してくれたとっておきの答えは、凛音だけのひみつの日記帳をつけることだ。
「りんだけがみるんだから、りんの素直な気持ちをなんでも書いていいのよ。パパにもママにも見せなくていいからね?」
口元に指をたてた「しぃーっ」のポーズとともに告げられたとっておきの提案を前に、ぴょこんと心臓が飛び跳ねるようなうれしい気持ちになったことをいまでもありありとおぼえている。
ほら、パパのことだって大好きだけれどやっぱりこういう時に頼りになるのはママだ。ママはもう大人ですてきなレディだけれど、凛音とおんなじ『女の子』だから凛音の気持ちをちゃあんとわかって、こんな風にとびっきりのアイデアで答えてくれる。
かくしてまたひとつ、凛音は大人のすてきなレディへの階段をのぼったのだ。
(そりゃそうよ、りんはもう赤ちゃんじゃないもの)
凛音はもうベビーカーには乗らないし、お手洗いだってちゃんとひとりでいける。
これからもっとおおきくなって大人っぽくなって、アニメや絵本に出てくるお姫さまみたいなすてきなレディになるのだ。そしたらきっとみんな、忍くんと凛音をお似合いのカップルだなんて言ってくれるはずだ。
パパとママのお友だちで、パパやママとも同じ年の凛音の大切なボーイフレンド、それが忍くんだ。
忍くんは凛音のことを赤ちゃんのころからずうっと知ってくれているらしい(赤ちゃんの凛音と遊んでくれている写真を見せてもらった時、まだちいさすぎて覚えていないのになんだかはずかしい気持ちになった)けれど、ふたりきりでデートに連れて行ってくれるようになったのは凛音がすこしだけお姉さんになったここ一年ほどのことだ。
凛音を赤ちゃん扱いでもパパの代わりでもなくって、ちゃんと大切なおともだちで、ちいさくても立派な『レディ』になれるようにエスコートしていろんな楽しい場所に連れて行ってはたくさん遊んでくれる忍くんのことが、凛音はたちまちに大好きになってしまった。
おしゃれでかっこいいでしょう。背が大きいでしょう。りんがおめかししてきたらほめてくれるでしょう。お絵かきがじょうずでしょう。たくさん遊んでくれるでしょう。それから、それから。
数え上げればきりがないほどで、それだけでにこにこ笑顔がとまらなくなってしまう。
パパだってうんとかっこよくて優しくてなんでもできる自慢のパパだけれど、やっぱり忍くんに向ける「好き」とはちょっと違う。パパがいつでもそばにいてくれるヒーローなら、忍くんは凛音をきらきらのお姫さまにしてくれる凛音の王子さまだ。
絵本やアニメの中にはすてきな王子さまがいくらだってたくさん出てくるけれど、凛音をとっておきのお姫さまにしてくれるのは世界中探したってきっと忍くんしかいない。
(りんはまだちいさいけど、ちいさいのはいまだけだもん。ちゃんとおねえさんになるんだもん)
いまはまだ凛音がうんとちいさいからいっしょにいても「パパとおでかけなのね」だなんて勘ちがいする人ばっかりだけれど、忍くんはパパのかわりなんかじゃない大事なボーイフレンドだ。
凛音がまだうんとちいさいからちゃんとした「かれし」と「かのじょ」に見えないだなんていうなら、仕方ないことだとわかっていても、やっぱりちょっとくやしいし悲しい。
日記帳のページには、水族館のお姉さんが撮ってくれたチェキがはってある。
ペンギンさんの水槽の前で、しろくまさんのししゅうのシャツ(忍くんはいつもかわいいお洋服でおしゃれをして会いにきてくれる)の忍くんがおはな畑みたいな柄のワンピースの凛音をだっこしてくれているツーショットはちょっとはずかしいけれどとってもお気に入りだ。
凛音がすごく大きくなればだっこしてもらうのも大変だから、だっこや肩車をしてもらえるのがきっといまだけなのも、凛音はちいさいなりにちゃあんとわかっている。
(おとなになるとまたちがうふうに大変なんだろうな。でもりんはきっとおとなになっても忍くんが大好きだもん。そんなのわかるもん)
じいっと目を細めるようにしながら、お気に入りのツーショット写真をぼんやり眺める。
忍くんの笑ってくれるお顔はかっこいいのにかわいくて、みているだけで胸がぎゅうっとなって、おひなぼっこしてる時みたいなぽかぽかした気持ちになるのがふしぎだ。
「それでねえ、おおきいさめさんがすいーって泳いでたり、あざらしさんがぐるんってトンネルをくぐるのを忍くんとみたの。おさかなさんはみんな泳ぐのがすごくはやくてねえ、うろこのところがきらきらしてるのね。それでねえ、くらげさんはすそのところがひらひらってレースみたいになってたの。すごいねえ、お姫さまのドレスみたいだねえってりんが言ったらね、りんちゃんがあんなドレス着せてもらったらきっと似合うだろうねってしのぶくんは言ってくれたの」
「ふうん」
色とりどりのクレヨンを手にいっしょうけんめいにお話をしても、隣のきょうへいくんがくれるのはいつでも気のないお返事ばかりだ。きょうへいくんは仲よしのお友だちなのに、忍くんのお話をする時にはきまっていつもこんな風につまらなそうにされてしまう。
「きょうへいくんはおさかなでどれが好き?」
「……くじら」
ぼそり、と答える手元、画用紙の中ではおおきな飛行機が翼を広げている。
「水族館はねえ、くじらさんがいないの。でもねえ、おおきいさめさんはいるのよ」
答えながら、手にしたクレヨンでさめのおなかの水玉もようを描いていく。
「さめはらんぼうだからね、ぱくって食べられちゃった人もたくさんいるんだって。ライオンさんだってとらさんだってみんなほんとうはすごく怖いんだよ。りんがきゃあーって言ってるとねえ、忍くんもきゃあーっていっしょに言いながらりんの手をぎゅうってしてくれるの」
とびっきりの思いでをにこにこ笑顔で語れば、対照的な不機嫌そうな顔はますます広がるばかりだ。
……どうして楽しいお話をしているのに、きょうへいくんはりんといっしょににこにこしてくれないんだろう? きょうへいくんのこういうところが、りんにはちょっとむずかしい。
「あらあ、ふたりとも上手に描けてるわねえ」
ひとまずはおえかきに戻ろうと思ったところで、にこにこ話しかけてくれる先生の姿が飛び込んでくる。
「りんちゃんは水族館に行ったのね。誰といっしょにいったのか聞いてもいい?」
「忍く~ん!」
「りんちゃん、忍くんと仲よしだもんねえ」
瞳を細めながら告げられる言葉に、むくむくとうれしい気持ちがわきあがってくるのを感じる。
忍くんが凛音の大切なお友だちなのは先生たちもみんな知ってくれているし、発表会に遊びにきてくれた時に先生に紹介だってしたことがある。大切な人のことを大切で大好きな人たちがちゃあんと知ってくれているのはこんなにもうれしい。
お得意のにこにこ笑いを浮かべたまま、凛音は続ける。
「忍くんもりんもねえ、らっこさんがすっごくかわいいなぁって思ったの。らっこさんはおなかの上で貝をじょうずに割るしね、くるくるってしながら泳ぐところもすごくかわいいの」
「よくみてきただけあってすごく上手ねえ、さすがりんちゃんね」
「上手に描けたらねえ、忍くんにも見せてあげるの」
えっへん、とにっこり笑顔で答えれば、隣のきょうへいくんはいつのまにかそっぽを向いている。
「でもねえとうこ先生、きょうへいくんも飛行機の絵が上手なのよ」
「へえ~」
話題をむけられたとたん、そっぽを向いていたきょうへいくんはたちまちにはずかしそうにもじもじする。
すごく上手なのはほんとうのことなんだからじまんしてくれたっていいのに、きょうへいくんは凛音とちがって大事なことをお話するのがあんまり得意じゃないらしい。
「きょうへいくんは飛行機を見に行ったのね。おうちの人といっしょだったの?」
「……おとうさん」
ぼそりと答えながら、クレヨンを手におおきな翼のもようを丁寧に塗り分ける姿をぼうっと眺める。
なんでも、凛音が水族館に遊びに行ったのと同じ日に、きょうへいくんは飛行機がたくさん集まるショーにつれていってもらったらしい。
「きょうへいくんは飛行機大好きだもんねえ」
にこにこ笑いながら話しかけると、ちょっとだけ赤くなって黙り込んでしまう。
きょうへいくんのこういうところはちょっとむずかしいけれど、ほんとうに怒っているわけなんかじゃないことくらいは、凛音ときょうへいくんはお友だちだからちゃんとわかっている。
(なんで大好きっていうのがそんなにはずかしいのかなぁ?)
頭の中のおおきなハテナマークに首を傾げながら、ひらひらのくらげの手足のレースみたいなところに色を塗るのに集中する。リカちゃんのドレスにあったみたいなきらきらでふわふわの布を使えば、こんなふわふわがお水の外でもみれるだろうか。
(大きくなったらりんも着たいなぁ、こういうふわふわでひらひらのやつ)
紙の上でなら楽しい思い出も将来のおおきな夢も、なんだって形にできてわくわくするから、凛音はおえかきの時間が幼稚園ではいちばん好きだ。
「それでねえ、りんはさめさんが大きくてびっくりしたから忍くんときゃあって言ってたけど、忍くんがおててをぎゅうってしてくれたから怖くなかったのよってお話をきょうへいくんにしたの。したらねえ、きょうへいくんはちょっとつまんなそうにしてぷいってしちゃったの」
「へえー」
お仕事帰りのパパ(こういうことは男の子同士のほうがわかる気がしたのだ)にありのままに幼稚園でのてんまつを話してみれば、興味深げなようすで答えてくれたのはこんな一言だ。
「りんもさあ、忍くんがあまねくんのことうれしそうにお話してるとちょっとだけやだなってなるって前言ってたじゃん。りんとお話ししてるのにあまねくんのことばっかりお話ししないでーって。きょうへいくんもそういう気持ちだったんじゃないかなって、パパは思うんだけど」
ひとたび『忍くんの王子さま』の名前が出されたところで、いつものあのお胸のおくがちくちくしてそわそわする感覚がまざまざとよみがえる。
「でもきょうへいくんとりんはお友だちだよ? きょうへいくんは忍くんみたいにりんにニコニコしながらいっしょに遊ぼって言ったりしてくれないよ?」
きょうへいくんとはとなりの席だから他の子よりもたくさんお話しもするし、いっしょに遊ぶことも多い。
男の子の中でいちばんの仲よし、だなんて言ってもおかしくはない。
それでも、きょうへいくんは忍くんみたいに凛音と積極的に遊んでくれるわけでもなければ、「大好き」だなんて言われたことだってもちろんないままだ。それなのに凛音とおんなじような気持ちかもしれないだなんて、いったいどういうことなんだろう?
瞳をまあるくしてたずねる凛音を前に、すこしだけ困ったように笑いながらパパは答える。
「りんはさぁ、好きな人に大好きってちゃんと言えるよね? 忍くんもそういう人だよね? でもねえ、みんながみんなそういうのじゃないんだよ。きょうへいくんはもしかしたら、りんともっと仲よしになりたいけど、はずかしいから上手に言えないのかもしれないよ?」
「むずかしいのねえ?」
首を傾げながらたずねれば、いつもそうするみたいにお膝の上に抱っこして頭を撫でてくれる。
「りんはさあ、忍くんが大好きだよね?」
「うん」
「忍くんもりんのことが大好きだよね?」
「うん」
目を輝かせて答える凛音を前に、じいっとこちらを見つめながら、続けざまに告げられる言葉はこうだ。
「でもさ、忍くんはあまねくんのことも大好きなのはりんも知ってるよね?」
「……うん」
「忍くんがあまねくんが好きだからってそのぶんだけりんのこと好きになってくれないわけじゃないっていうのは、りんもちゃんとわかるよね? でもさ、忍くんがりんのことだけ好きでいてくれたらいいのにっていうのはちょっとくらい思わない?」
「……うん」
ほら、まただ。すっかり身に覚えるのあるおむねのちくちくにぎゅうっとなっていれば、おおきなてのひらは凛音をやさしくだっこしながら、いいこいいこをするみたいに頭をなでてくれる。
「りんはあまねくんが好き? きらい?」
「……すき」
あまねくんは凛音にもいつだってとびっきりやさしいし、ちょっぴりはずかしがりやさんだから凛音と遊んだりお話しするのがあんまり得意じゃないだけなのをちゃんと知っている。
でもそれは、大好きな忍くんの大切な王子さまのことを凛音が嫌いになる理由になんてすこしもならない。
うまく言葉にできないもやもやに口をつぐむ凛音を前に、いつものあのにっこりやさしい笑顔でパパが教えてくれるとっておきの言葉はこうだ。
「きょうへいくんはさあ、忍くんに会ったことがないから忍くんのことまだ知らないんだよね。だからさ、りんが知らないお兄さんと仲よしなんだって話してるの聞いてると、自分だってりんと仲よしなのにりんは知らないお兄さんのほうが好きなんだな、そんなのつまんないなって思っちゃうのかもしれないね」
「じゃありんは忍くんのお話をしちゃだめなの?」
おそるおそる尋ねてみれば、とびっきりのやさしい笑顔とともに返される言葉はこうだ。
「だめじゃないけど、ちょっとだけがまんしよっか? あとねえ、きょうへいくんの好きなもののお話もたくさん聞いてあげるといいよ」
「……はあい」
「いい子だね、りんは」
うれしい気持ちでおむねがいっぱいになっていくのを感じながら、Tシャツの胸元にぎゅうっとしがみつく。
忍くんにだっこしてもらう時みたいにたくさんどきどきしてマラソンでめいっぱい走ったあとみたいな苦しい気持ちにはならないけど、そのかわりみたいに安心してうれしくてぽかぽかしてくるのが不思議だ。
忍くんのこともパパのことも、大好きでずうっといっしょにいれたらいいのにってそう思う気持ちはおんなじなのになんでこんなふうに違う気持ちになるんだろう。
大好き、にもきっと、たくさんいろんな形があるのだ。
「大好きっていうのもいろいろあるのね?」
「そうだね」
にこにこ笑いながら話してくれるパパのお顔はうれしそうのなのにちょっとだけ寂しそうで、ほんのすこしだけ『男の子』の顔に見えるのが不思議だ。
5がつ15にち くもり
パパにようちえんのきょうへいくんのおはなしとしのぶくんのおはなしをしました。りんとママはおんなのこどうしでなかよしだけど、パパはおとこのこなのでおとこのこのことがよくわかるのかなっておもいました。
きょうへいくんもしのぶくんのことをすきになってくれたらりんはうれしいなっておもいました。
りんもあまねくんとなかよしになれるかな、なれたらいいなってちょっとおもいました。
「ふぅ」
日記帳の文面をみながら、やっぱり凛音にはまだちょっとむずかしくておむねの奥がぐるぐるしてくるのをあらためて感じる。
みんなに大好きで大切な人がいる。いろんな人がみんなを大切で大好きだと思える気持ちがあるから、誰もひとりぼっちにならないで楽しくすごせる。
頭ではちゃあんとそうわかっているつもりなのに、忍くんは凛音のことだけが好きなんじゃないんだと思うと、やっぱりなんだかおむねがちくちくしてそわそわしてしまう。
(忍くんだってりんのこと好きだもん)
会うたびにちゃあんとそう言ってくれるから、凛音の思いこみなんかじゃないのはたしかだ。
でも、忍くんにはあまねくんがいる。
「りんちゃんのこと大好きだけどもうあまねくんと結婚してるもんなぁ」
凛音なりの一世一代のつもりのプロポーズをいつものあのにこにこ笑顔で返されてしまったことは、記憶にまだ新しいままだ。
忍くんがあまねくんといっしょのおうちに住んでいるのは仲よしのお友だちだからで、大きくなったら凛音と結婚してくれると思っていたのに―まさかもうあまねくんと結婚してただなんて、とんだ大騒ぎだ。
忍くんはあまねくんがだいすき。
あまねくんも忍くんがだいすき。
ふたりがお互いのことがとっても大切で大好きだから、ずうっと家族でいる約束をして結婚したのは凛音のパパとママとおんなじ。
凛音は忍くんが大好きで、忍くんも凛音のことが大好き。
あたまではいくらわかっているつもりでも、やっぱりおむねのあたりがちくちくしてぐるぐるしてしまうのはどうしようもない。
(あまねくんは忍くんの王子さまだもん)
忍くんが凛音の王子さまなのと同じように、忍くんからみたあまねくんは忍くんの王子さまらしい。
あまねくんはとってもかっこよくてやさしいし、ふたりがおしゃべりしているのをみれば、ふたりがほんとうになかよしの大好き同士さんなのは凛音にだってちゃんとわかる。
かけっこのはやい順番で順位を決めるみたいに、「大好きで大切」の気持ちに順位を決めてくらべっこをするだなんてことに意味がないことくらい、凛音はもう幼稚園でも大きいお姉さんだからちゃんと知っている。
(あまねくんは忍くんがりんのこと好きでも平気なのかなぁ? りんとちがって、忍くんと家族だからもうだいじょうぶなの?)
あまねくんとちゃんとお話してみたい気持ちはあっても、あまねくんに会うと忍くんとはちがう意味でどきどきしてしまうから、じょうずにお話する自信が凛音にはまだない。
(あまねくんとも仲良しになれるといいな。あまねくんはりんともっと仲良しになってもいいよって言ってくれるかなぁ?)
好きな人に自分以外にも好きな人がいて、しかも結婚もしてただなんて。凛音の恋は四歳にしてなかなかむずかしい形をしている。
(でもお姫さまでお嫁さんはまだいないでしょう? あまねくんが忍くんのだんなさんなら、りんがお嫁さんにしてもらうのはまだいいんじゃないの?)
そろそろ寝る時間なので、また今度ママに聞いてみることにしよう。
6がつ9にち くもりときどきはれ
しのぶくんとあまねくんとさんにんでびじゅつかんにいきました。
えほんのてんらんかいで、きれいでかわいいえほんのえをたくさんみました。
ぬりえのこーなーでいろぬりをしたのもたのしかったです。
あまねくんはかえりにりんがいちばんすきっていったおんなのことぞうさんとふうせんのえのはんかちをかってくれました。
りんがおじぎをしておれいをしたらあたまをなでてほめてくれて、りんはうれしいのとちょっとはずかしいのでえへへってなりました。
びじゅつかんはおにわがひろくてきれいで、りんとしのぶくんはしゃぼんだまをしてあそびました。
あまねくんはりんとしのぶくんがあそぶのをにこにこしてみてくれました。
りんはれでぃなのでおみせやさんでおすまししていいこにしてたら、あまねくんがほめてくれました。
あまねくんはほめてくれるのがじょうずでせんせいみたいだなっておもいました。
りんはしのぶくんがだいすきだけど、あまねくんもやさしいしかっこいいからおうじさまみたいだなっておもいました。
あまねくんはきょうへいくんとちょっとにてて、おはなしするとちょっとはずかしそうにするけど、にこってわらってくれるときのおかおはかわいいなっておもいました。
みんなでてをつないであそぶのはとってもたのしかったです。
これからあまねくんとしのぶくんとさんにんでもっとなかよしになりたいです。
でもやっぱりりんはしのぶくんとふたりきりでもでーとがしたいです。
りんちゃんは「
デートにはうってつけの日」に登場してもらった「ジェミニとほうき星」の海吏の親友で周くんと忍の友人の春馬くんのお嬢さんです。

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