さきちゃんたちの夜 (新潮文庫)吉本ばななはずっと読んでいて、今年は「海のふた」も読んだのですがこっちのほうがよりすきかな。傷ついた人たちがありのままを受け入れ、穏やかに優しく生きようとしていく姿に安堵感を得ました。
短いエピソードがふわり、と降りてくるところがとてもよい。
すみれ荘ファミリア (富士見L文庫)昔ながらの下宿、すみれ荘にひょんなトラブルから突如入居してきたどうにも怪しげな作家・芥。彼の介入により、一見穏やかに見える住人たちの裏の顔が次第に明らかになり。
人間の悪意や本性が暴かれ、終盤のたたみかけるような展開にはハラハラされました。エグみはあれど読後にいやな気分にならないのは人間への信頼と愛情を感じられるからでしょうか。
「家族」の絆が結び直されていく結末には安堵しました。
ある種のテンプレありきのハッピーエンドというBLジャンルの枷が外れるとこういったお話を書かれるのかー、という点でも興味深かったです。
しかし凪良さんは恐ろしく小説がうまいな。(おまえはプロになにを言っている。笑)
年1くらいでいいから今後も一般レーベルで書いてくださるとうれしい。
ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)タイトルでどうなるのかわかってるんだけどやっぱり悲しい、しくしく。
ここではないどこか、を思わせる異国情緒漂う舞台背景が好きです。静謐でもの悲しくてしんしん、と降り積もるように過ぎていく日々の描写のひそやかさが好きです。
薬指の標本もよかったですね。
珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎鎌倉の海辺の家で、北村さんの隣人として寄り添うように穏やかに日々を過ごした著者がスケッチのようにやわらかく隣人の姿を描くエッセイ。
人はこんなにも慈しみをこめたやわらかなまなざしで隣人を見つめることが出来るのか、という無償の愛のようなものに満ちていて、すこし切なくて優しくていとおしくなります。
この本に切り取られた時間の中にいたくなる一冊。
わたしは本を買うのが好き、と言ったほうがいいのでないかという勢いで、本が好きなのにあんまり読んでる余裕がなくて悲しい日々でもありました。
ツイッターをやめればもっと本が読める気がするんですが、ツイッターやってると面白そうな本や刺激がある情報が得られるのもまた事実なんですよね。
好きなジャンル・得意な分野・好みの偏りはすごくありますが、世界をやさしくたおやかに切り取る、光に満ちたまなざしが溢れた本が好きなんだろうなと思います。
知的好奇心を刺激してくれるものが好き、ということに尽きるのですが、根底に優しさや光が満ちたものが好きなのは本でも音楽でも同じなのかもしれない。
なるほど、そんな人間だからおやすみアンソロが出来たんだな!(自分の中で答え合わせにつながった)
「珈琲とエクレアと詩人」は肥後橋のCalo、「目の見えない人は世界をどう見ているのか」は京都のけいぶんしゃで偶然目にとまって手に取った本でした。
もっぱらチェーンの大型書店ばかり行っていますが、セレクトされた本屋さんで、場の空気ごと持ち帰るように選んだところ、どちらも特別な愛おしさ溢れる一冊となったのでそこも含めてすごくうれしかった。
来年も行ってみたことがない色々な本屋さんに行って、心ときめく出会いを探し求めてみたいです。