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調弦、午前三時

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【再録】受「俺がアラブの石油王に見初められて誘拐されたらどうする?」 攻め「えっ!?」





11月の東京文フリで頒布した無配コピー本からの再録です。
本は★こちら★(海吏とマーティン編)に加筆修正した物+二本目の周くんと忍編の二本立てでした。
今回は後編、周くんと忍編を続きに収録しております。

※忍はMy Shooting Starに登場するジェミニ~シリーズ主人公、海吏が大学で知り合った友達です。
長編の続編のスピンオフてどないやねん、と書いてるわたしが一番思っています。
※このふたりの馴れ初め~あれやこれやの長編を現在書いています。


ついでにこの子たちは長編を書く為に作ったキャラクターですが、先行?して、俳句・短歌のBL読み解凍小説に何本か登場してもらっています。
以下が彼らのエピソードまとめです。(再掲)
(作者名敬称略)

前置きが長くなりましたが、続きからどうぞ。


「ねーねー周(あまね)、ちょっといい?」
「なんだよ」
 どうせまたろくでもないことに決まってる。だったらさっさと話せよ、聞き流してやるから。口直しのほうじ茶に口をつけながらぼんやりと、いやにくるくるとよく動くその焦げ茶の瞳を眺めるこちらを前に、よくタレの絡んだ回鍋肉をのせた白飯を勢い良くかき込むようにしながら投げかけられたのは、こんな突拍子もない問いかけだ。
「周はさー、俺がアラブの石油王に見初められて一緒に国に帰ってくれって連れ去られたとしたらちゃんと迎えに来てくれる?」
「はぁ!?」
「いやだからさ、アラブの石油王がね」
「だから何で石油王が出てくるんだよそこで!」
 思わず武器を手に身構えるかのような心地で箸を片手に力説するこちらを前に、いつも通りのあの、けろりとした様子で忍は答える。
「なんかね、最近そういうシチュエーションのマンガ? みたいなのが流行ってるみたいでさぁ」
「おまえのその無駄知識はどこで仕入れられてるんだよ……」
 いや、教えて貰いたいだなんて思っていやしないけれど。
 相変わらずの四方八方に飛び交う会話を前に、ひとまずはずずっと音を立てるようにしてわかめスープを啜りながら平静を取り戻すようにする。
「まぁあり得ない話だからマンガになるっていうのはわかんだけどさぁ、いざそうなったら困るよねーって思って。周も俺がそんな目に遭ったら少しは危機感感じてくれんのかなーって。考えない? そういうこと」
「……発想がいちいち飛躍しすぎなんだよ、おまえは」
 わざとらしく眉間に皺を寄せるようにしながらちらりと手元をのぞき込めば、向かいに座る男の皿の中で、ピーマンだけが器用に避けられていることに気づく。
 成人した男が何やってんだよ、みっともねえな。取り分ける時にわざわざピーマンを多めに取ってやったのにこの始末だ。
「いいからピーマンくらい食えよ、そうじゃねえとアラブの石油王に拾って貰えねえだろ」
「誰がいつ石油王に拾ってほしいって言ったー?」
 わざとらしく口を尖らせてそう答えながら、肉と一緒にピーマンをどこか不満げに口へと放り込むその姿を、どこか呆れながらも、ぼんやりと周は眺める。
 食べるのと喋るのとどっちかにしろとこいつに教育する人間はいなかったのだろうか。まぁ、黙りこくったまま食べるよりかは、こうして無駄話でもしながらの方が幾分か気も紛れるのは確かなのだけれど。
「ほら、肉と一緒なら食えんだろ。おまえ青椒牛肉絲ならピーマン食えんじゃん、それと一緒だよ」
 タレのよくしみたピーマンを、音を立ててもりもりと咀嚼するこちらを前に、どこか不満気な様子で忍は言う。
「でもさー、俺がピーマン食べれたら石油王に迎えにこられるんでしょ? 周はそれでもいいわけ?」
「だから何でさっきからそんなに石油王が出てくるんだよ、おまえどんだけ石油王が好きなわけ?」
 呆れるこちらを前に、いつも通りのあの飄々とした態度を崩さないままに目の前の男は答える。
「好きなのは周だけだよ?」
「だからそういうことさらっと言うんじゃねえよ」
「あー、照れてる照れてるぅ」
「このくらいで照れるかばかやろう!」
 答えながら、木製の椀を手にわざとらしくずずっと音を立ててわかめスープを啜ることで、きょろきょろと無遠慮なその視線から目を逸らすようにする。
 かーわいいー。冷やかし混じりの言葉に、さっと胸のあたりを刷毛でなぞられたみたいなぞわぞわした不都合な感情が揺さぶられる。
 こいつと居るといつも、こんな風に無駄に感情が忙しい。こんな感覚、ずっと昔に捨て去ったそのつもりだったのに。
「まぁ、でもさー」
 タレでべたついた口元を、子どもがよくそうするみたいに乱暴に手でぬぐい、喉を鳴らすようにしてほうじ茶をぐいぐいと飲みながら忍は答える。
「石油王は日本人のサラリーマンが好みなんだって。だからさ、よくよく考えたら俺よか周のほうが危ないんだよねえ」
「おまえ院生だもんな、来年から」
 ちらりと視線をあげたその先、半開きになったままのクローゼットには少しくたびれた、クリーニングのビニールもタグもそのままのリクルートスーツがちらりとその姿を覗かせている。
「ていうか何でリーマンがいいんだよ。何なのその設定、逆プリティウーマンみたいな? ジャパニーズドリームなわけ?」
「俺に聞かれたってわかるわけないっしょ?」
 けらけらと笑いながら答えるその顔を何の気なしに眺めながら、目の前の男の真似をするように残り少なくなった回鍋肉の豚肉とキャベツを乱暴に茶碗にのせてもりもりと白飯とともに口に放り込む。実家にいる時には行儀が悪いとよく叱られたけれど、こいつと食事をするようになってからはすっかり、そんな些細なマナー違反にも慣れてしまった。堅苦しいだけの行儀作法よりも楽しさ、それが一番の食事の時間の楽しみ方なのだと、こいつとともにする食卓で身をもって知ることになったとは思うのだけれど、悔しいのでいちいち口には出さない。
 不機嫌を装うのにも疲れてしまったこちらを前に、いつも通りのあのへらへら笑いを張り付けたまま、忍は尋ねる。
「じゃあ逆に聞くけどさ、周は石油王に嫁ぎに来いって言われたらどうする? 左うちわだよ? スーツ着て満員電車乗んなくていいし、残業しなくていいんだよ? 部屋だってここの何十倍だよ?」
「決まってんだろ、んなの」
 ぱり、ぱり、と音を立てるようにして口いっぱいに頬張ったキャベツとピーマン(忍の分も入れたので、少し割合が多めだ)をめいっぱいに噛みちぎるようにしながら、周は答える。
「行くわけねえだろ、んなの。そんな訳わかんない国にとっつかまえられるくらいならあくせく地道に働いて普通に住み慣れたとこでこやって暮らす方が性に合ってんだよ」
「俺もいるし?」
「……言わせんなよ」
 ぼそりと頼りなくそう呟けば、上機嫌の笑顔がすかさず覆い被さってくる。これじゃあまるで、まんまと網か何かに捕らわれた気分だ。
「言ってくれていいのにー」
 わざとらしいにやにや笑いを前に、それでも微かに耳の端が熱くなるのを抑えられない。
 こちらのそんな様子に気づいているのかいないのか、どこか嬉しそうに声を弾ませるようにしながら忍は尋ねる。
「ねー周、ねー?」
「なんだよ、うっせえな」
 心底面倒そうに答えるそのそぶりを前に、一切気にも留めないいつも通りの態度で返ってくる言葉はこうだ。
「明日休みだよね? この後えっちしようよ」
「……何で飯食いながら言うわけ、そういうの」
呆 れるこちらを前に、さも当然とばかりの態度で目の前の男は答える。
「決まってんじゃん、食欲が満たされたら次は性欲でしょ?」
「本能のままに生きてんじゃねえよ」
 答える代わりみたいに、口の周りをべたつかせたままのにやついた笑い顔が、そっとこちらへと返ってくる。
「そっかぁ、石油王よりも良いって思ってくれるくらいには周に好きで居てもらえてんだー。愛されてんなー俺、さっすが俺だよねー?」
「だから何で俺が石油王に求婚される方で話が進んでんだよ。元はと言えばおまえが石油王に連れさらわれたらって話じゃねえのかよ?」
 わざとらしいしかめっ面で応戦するこちらを前に、茶碗に残った米粒を一つずつ丁寧に箸の先でつまみ上げるようにしながら忍は答える。
「だって石油王ってリーマンフェチらしいしさぁ? まぁ俺も周のスーツ姿、割と好きだけどね。えっちする時いっつも着ててほしいくらい」
「黙れこの変態」
 ほぼ反射的にそう答えれば、すかさず返ってくる言葉はこうだ。
「んなこと言ったらその変態とくんずほぐれつしてるおまえだって変態じゃん。やーいやーい、変態なかまー」
 小学生かよ。これが成人済みの男の態度か。
 酷く呆れながらも、この軽々しい態度が決して嫌いではないのだから、そんな自分が心底恨めしい。ただひとつ言えることがあるとすれば、こいつさえ隣に居れば退屈なんてしてる暇がひとときもないということ、ただそれだけで。

 そんなわけで、どこにいるかもわからない日本人の男フェチのアラブの石油王様。
 こちらはなんだかんだでこのおかしな男とせせこましく楽しくやっているので、どうかこの平穏な生活を邪魔などしてくれないよう、重々お願い申し上げます。

「ねーねー、石油王のえっちってどんなだろうねー? やっぱ薔薇の花びら浮かべたお風呂とかに入るわけ? ベッドって天蓋付? 金箔プレーとかオイルプレーとかしちゃうわけ??」
「知るかよ!!」

 安物のシングルベッドのスプリングを軋ませながら、今宵もまた、二人で過ごす夜はしめやかに更けていく。







友達に周くんは忍の扱いが雑だよねって言われたんですが、忍曰く「周は素直じゃなくて若干ひねくれてるところがところがツンデレでちょう可愛い」らしいです。

あと、便宜上受って言ってるけどこの子たちはどっちが受けとか攻めとかそういうの、ないです。
個人的に好きな組み合わせなので、また長編などでお目にかかって頂けるよう引き続き執筆頑張ります。

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