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調弦、午前三時

小説と各種お知らせなど。スパム対策のためコメント欄は閉じております。なにかありましたら拍手から。

ごはんアンソロジー「きょうのごはんは?」先行レビュー



表紙画像をWEBカタログよりお借りいたしました。


11月23日(木祝)東京流通センターで開催される文学フリマ東京で頒布されるごはん小説アンソロジー「きょうのごはんは?」に参加させていただきました。
ア30「バールのようなもの」さま:WEBカタログ

現代物~ファンタジー・SFなど、多種多様な「ごはん」を巡る人と人の物語がたっぷり39作品収録されております。

企画サイト



わたしは参加者特典として、頒布に先駆けて公開された全作品を読ませていただきました。

・「いつ」「どこで」「誰と」「どんな風に」食べるかによって39人、39通りのドラマがある
・日常生活と切っては切り離せないものだからこそ、そこには様々な感情がいくつも潜んでいる
・寂しさと優しさ/あたたかさはいつだって表裏一体
・人と人の関係性や距離感、パートナーシップ、家族関係、ブロマンス的な人間同士の心の距離の描き方が魅力的

一通り読ませていただいた所感はそんなところ。
誰が読んでも、どこから読んでもおもしろい、普遍的なテーマを掲げて指揮を執ってくださった主催のいちかさんの力によるものなのかな、と思います。


というわけで、事前に読ませていただいた折に、Twitterで投稿した一言感想を以下にまとめました。(順不同)
出来るだけネタバレは防ぎましたので頒布前の参考などになれば幸いです。以下、感想マラソン(と、自作の紹介です)








いちかさん「ペガサスのみぞれ煮」
このタイトルから内容が想像できようか…笑 いつしか疎遠になった幼馴染との夕餉のひと時の思い出。
なんとも言えないいびつな空気が張り詰めて繊細で美しい。二度と帰れないあの日のノスタルジーにしん、となります。

川鷺 ういさん「カップラーメンとバニラアイス」
体に悪そうな夜食は背徳の味。いっしょに食べる友達がいるならなおのこと。ミヤちゃんが小悪魔っぽくてかわいいぞ! そこはかとなく百合風味? とニヤニヤしました。

せすとさん「宇宙食」
ひとりで食べるごはんは餌って岡崎京子が書いてたな、たしかに義務感で食べるごはんは味気ないよね。私の寂しさをまるごと抱きしめて「ちゃんと食べて、生きて」と繋ぎ止めてくれるのが夢で出会う宇宙食の彼女なのかな、と思いました。ゆらゆらさびしい。

巫夏希さん「ポテトサラダ」
(おかんの作った)山盛りのポテトサラダが食べたいって向井秀徳もライムしてました。おうちで食べるポテトサラダはおいしいよね。帰る場所と、そこで食べたい懐かしい味があるって嬉しいよね。一人で食べる駅弁との対比が味わい深いです。

狭野絲子さん「ごろごろ野菜と骨つき肉のポトフ」
奇妙な同居生活を送るふたりのほかほかポトフをいっしょに食べるお話。このふたりの関係性がほんとうにおかしみといとおしさ溢れててよいのです。分類的にはブロマンスかな? とってもほっこりします

染さん「ピーチタルト」
ピーチタルトの甘さとまばゆいきらめきは女の子のひみつの味
少女でありたいと願う残酷さが切ない。ピーチタルトの彼女が大切な人と共にする「ごはん」の場面にしん、とします。

秋原句外さん「出汁巻卵とお味噌汁」
訳ありだけれどとっても仲良しの二人が過ぎ去った過去を思い出しながら食べる夜食のひと時。
戻れない過去への悔いやわだかまりがあっても「いま」こうしてあたたかい食卓を囲める時間を大切に思いあえるのはいとおしいですね

とうこさん「山奥御膳」
訳ありでこぼこ同居生活は互いの寂しさを寄せ合い、ずっとほしかった絆をいつしか結び合うことで成り立っている。素朴で優しいご飯の描写がとても美味しそう。そして問題の発言は…いいのかな。笑 みなさん楽しそうだからいいかな…笑

藤原湾さん「親子丼」
うむ、とても良いドラマでした。冒頭シーンを見てファンタジーなのかな、と思いきや…。しみじみとやさしい「親子」のあり方のお話。人間関係の積み重ねがやわらか。彼らのこれから先に幸あれ。

がま口大魔王さん「寿司」
大人の官能が香り立つドラマだった。良い意味でトーンが違って2時間ドラマを見ているよう、最後はちょっと侘しくなります。うむ、回らない美味しいお寿司が食べたいぞ。それもカウンターで。

木倉兵馬さん「オイルサーディンのパエリア」
美貌のエルフ二人暮らしの生活感のある描写をあくまで淡々と積み上げていくさまがなんだかおかしい。笑 足りない材料をちゃっちゃと代用して美味しく仕上がったパエリアが楽しく気取らない食卓という感じでとても良きかな

なっぱ(偽物)さん「豆腐」
豆腐への淡々とした熱意がなんだかおかしい。ひたすら女性が豆腐を食べるだけ、なのですがなんでだか読ませるこの説得力はなんなのだろう。笑 豆腐、美味しいですよね。

真砂夜さん「くじら汁」
美味しくないくじら汁は私たちの命をつなぐための故郷の味。村のはぐれものふたりが共に闘い、共に生きるために交わした約束は悲痛でいたましくも力強い希望を感じさせてくれます。

ビッキー・ホリディさん「紅ショウガのかきあげと冷たいかけそば」
おおこれは…本格ハードボイルド。ボロ切れのようになった体を引きずって今もなお生き続けなければいけない苦しさよ。青春のひと時とのコントラストが鮮やかで悲しくもありますね。

蒼木遥かさん「玉ねぎたっぷりハンバーグ」
パパがんばれ! なハンバーグの思い出のお話。とびっきりの笑顔での「ご馳走さま」は何よりの贈り物。読んでるだけでこちらもニッコニコになります

紫水街さん「鰻の蒲焼き」
謎?の巨大生物との大捕物が始まったぞ!? と思ったらそれは序章に過ぎなかったぞ!笑 おっさんと知性溢れる女の子の凸凹コンビの活躍は臨場感あふれ、テンポも良くドラマチック! 蒲焼き、美味しいだろうなぁ。

蓮井遼さん「水餃子」
慣れないこわごわ手つきで自分のために水餃子をつくる。自分のためだけの時間を、料理というクリエイティブな作業共々楽しんでいる様子が伝わってくるのが読んでいるこちらも楽しい。小粒でピリリとくる掌編。

宵月悠人さん「コロッケ」
とても良質なファンタジー。旅の青年コンビと迷える少年との出会い、彼らの短い同行の時間がもたらすものとコロッケの思い出は…ほう、そう繋がるのね、とストンと落ちるラストの読後感が良いです。

鳴原あきらさん「かまたまうどん」
高校生の「僕」と「社会人」の私。次第に露わにされていく感情の在り処にわっ、と引き込まれます。読んでいて良い意味でゾワッとなる鮮烈なインパクト。いやほんと、面白いです。

山城よるさん「プッタネスカ」
大学入学を機に独り立ちした私の元へと訪れた後見人さんとのひと時。いやこんなキャラのたったいい男が保護者なら目も肥えますねそりゃあ。笑 「定型」から外れていても彼らには彼らだけの尊い愛があるのですね。ほっこり。

宗谷圭さん「おにぎり」
少し不思議でちょっぴりじんわり、な最後の晩餐エピソード。みんなで食べるはきっと特別な優しい味だね。

湯沢紫苑さん「高級料理と家庭料理」
小気味好いテンポの会話とめくるめくアクションが楽しい。映画やアニメを見ているよう。味気ない高級レストランのメニューよりもざっくり楽しく作る気取らない家庭料理の方が美味しいと思えるっていいね。これまたいいコンビですね

くー。さん「キムチ鍋」
味の好みが違うからお鍋はふたつ、のふたりのお話。互いを尊重しあいながら仲良く穏やかににこやかに日々を過ごせること。それを笑っていいね、と言ってもらえること。いとおしい関係性ですね。

ECOさん「じゃこたまごかけごはん」
朝霞くんも山口くんも学生時代から将来を見据えててしっかりしてんなー。(そこ!笑)周囲の人たちともあるべき良いパートナーシップを築き、「食べる」ことを通して幸福なコミュニケーションを生み出すふたりを見せてもらった気分。

今井優さん「カレーライス」
社会から少しだけはみ出してしまいながら強く生きようと懸命だった姉さんと、そんな姉さんをずっと身近で見守っていた僕。きょうだいの愛情はいびつさすらいとおしくて少し悲しい。

笛地静恵さん「塩にぎり」
ますむらひろしさん的なほのぼのした世界と思いきや…ちょっとドキッとする場面もあったり。かわいくてちょっと切なくもなる独特の世界に引き込まれます。そしておにぎりを口にする場面がとてもかわいくておいしそう

鷹梨響稀さん「夏野菜カレー」
気の置けない友人同士の夏休みのひと時。友達っていいよね、と素直にすとんとおもえる読後感がさわやかですね

小林マコトさん「ロールキャベツ」
忘れかけて居た「ご飯を一緒に食べる時間」の大切さを思い起こす、ありふれたとてもしあわせな一夜の優しいお話。この優しい一夜とその先に続くふたりの「これから」を優しく祈りたい。

夏樹一さん「ミネストローネ」
森の奥、カラスに導かれてたどり着いたお屋敷でヴァンパイアたちのお食事会に招かれる少女のひと時。皆さまとても個性溢れる魅力的な方達ばかりで食卓を囲む様子がユーモラスかつチャーミングです

梅川ももさん「カレー」
仕事の終わった週末、一足先に帰宅していた彼の作ってくれたカレーでふたりで晩御飯。
何気ない日常の描写の積み重ねの中にふたりのリラックスした関係性がふつふつと満ちていくところが良いですね。カレーが食べたくなる描写が巧み。

秋雨ゆらさん「大根卵粥」
学生演劇の世界でのお話。プレッシャーでダウンした僕を救ってくれたのは厳しくも優しい先輩の暖かな手料理と心尽くしの言葉。ぶ、不器用!と思わなくもないのですが、きちんと届いた言葉と気持ちは彼らの背中をやさしく押してくれたはず。

紙箱みどさん「お魚ハンバーグ」
小気味好く訳あり大家族の暮らしぶりが綴られる一編。クソ兄/愚妹と呼び合いつつもこのご兄妹にはちゃんとあたたかな絆があり、それを繋いでくれるのも「幼魚」と呼ばれるみかんちゃんの役割なのかな。タカミネさん引きがいちですね。

山台明良さん「焼うどん」
全身を機械化し、食事をとる必要のなくなった未来人がちょっとした好奇心から「焼うどん」の調理に挑戦するお話。遠いノスタルジーを交えて綴られる「食べる」喜びにしんみりほっこり。焼うどん食べたいな。とろけるチーズを入れても美味しいですよ。

樹真一さん「ロウの干し肉とカエンのスープ」
窮地を助けられたらしい「僕」と何やら訳ありの男の過ごす時間はいつ読み返すと「ああ、なるほど」な仕掛けのあるお話に。悲しい記憶と負の連鎖を断ち切る命をつなぐごはんの味にしみじみ、しんみり。

新田さん「琥珀色のフレンチトースト」
(長嶋有の)タンノイのエジンバラだ、と思ったシチュエーションではじまる物語。読み進みていくうちに「これは…辛いな…」となりました。厳しく辛い現実を前に、それでもこのフレンチトーストが結ぶ絆のあたたかさを信じたくなる物語。

玖波さん「豚の角煮」
豪快な料理シーンから始まる冒頭が楽しい。掛け合いも楽しいふたりの関係性が料理を、食べることを通して一歩前へと進むまで。ふたりのより良い着地点、一緒に向かいたい場所を見つけられたのならよいなぁと素直にそう思えるラストににんまり。

星うとかさん「スキヤキ」
ご飯を食べる時の仕草や作法って生まれ育った環境がすごく出るんですよね…弱気になってしまう佳奈子ちゃんに心配はいらないよ、と優しくフォローのできる雄太くんはいい男。そんなところもたまらなくかわいいと思ってるんだろうね。ふたりに幸あれ!

神田春さん「川魚の串焼きときのこ汁」
生まれと運命に翻弄されたお姫様が命をもらい、食べることで生きる力をぐんと身につけていく。川魚の串焼きに自ら挑戦する姿が生き生きと描かれていて、彼女に新しい世界が開けたのだなぁと感じさせてくれます。優しい出会いにほろり。

高梨來「おでん」
大学院生と社会人一年生、ふたりで過ごす週末ご飯。ふたりで食べるから楽しくていとおしい。そうして少しずつ、ふたりは許しあい、いびつな思いは優しく重なり合っていく。拙作「ほどけない体温」のふたりのその後のお話でした。




【高梨來はおでんです】
わたしは「ほどけない体温」の周くんと忍がおでんを囲む夕食の一コマを書かせていただきました。



『いっしょにごはんを食べる時間』を通して心の距離を近づけあい、確かな絆を築いていったふたりが笑顔で「おいしいね」を言い合えるひと時を書かせていただきました。
忍は大学院の一回生に、周くんはサラリーマンになってからの新生活の一こま、まだふたりのおうちに引っ越すよりも少し前のお話です。

もしよろしければ、たくさんの素敵なご飯の風景とともに彼らの一場面に、また、アンソロジーの外でもずっと続いている彼らの日々をのぞいていただければとてもうれしいです。

東京文フリには不参加ですが、ごはんアンソロも頒布される年明けの京都文フリにいます。

本編一話はカクヨムで読めます。
また、遠方の方などは続編「春、間近」ともにBOOTH通販でも頒布があります。



てきれぼの時の斜め上にも程がある宣材




おなかいっぱいのアンソロジー、一参加者として発行を楽しみにしております!

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【感想】あの道の角を曲がって危険すぎる街へ行きたい

「あの道の角を曲がって危険すぎる街へ行きたい」

(赤茶の星でシャムネコを飼う/なつこさん)



タイトルのインパクトとその吸引力、言葉の端々から感じる射抜かれるような力に引き寄せられて、ご本を手に取らせて頂きました。


危険すぎるその街は潮風が吹きすさんでいてどこかしらからガソリンのオイルの匂いが漂う、三人のうんとイカした市長の居る、わたしの知っているあの『ブランキージェットシティ』っていう街なのかな、とそう思ったり。

揺らめく炎の、赤や橙や青の鮮やか過ぎるその色。
31文字の中から浮かび上がる焦燥感、怒り、喜び、苛立ち。そして何よりもの、それらを全て包み込むような強くて色鮮やかな煌めき。
息もつかせないような感情が胸の内でせり上がり、受け手を加速させ、歪んだ残響音が鼓膜だけではなく、心臓ごと貫いて揺さぶってくるようなそんな錯覚を覚えさせる。

ああ、ロックバンドだ。
息を詰まらせて、疼く胸の痛みを押さえつけて、縋るようなそんな気持ちでスピーカーの向こうから飛び出した怪物に目も耳も、心も全部奪われるあの感覚がありありと呼び覚まされる。
『短歌』の表現が切り開く新たな言葉の地平でこんな場所に連れて行ってくれる体験が出来るのだなぁと、凍てついたその先で心を突き刺されるような錯覚に襲われました。

陽炎の向こうから、キラキラと煌めく星が降ってくる。
あの星に手が届くと信じて無様に両手を振り回したのに、届いた試しは二度とない。
それでもこの手を伸ばしたい、ここで確かに生きていく為に。


幾たびも悪夢みたいな日は過ぎて  それでも僕は目を開けたまま


絶望するにはまだ早過ぎる、とそう言われているかのよう。

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