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調弦、午前三時

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世界でいちばん

周くんと忍のある夜の出来事。
いつも以上にいちゃいちゃしてるだけです。R15相当。








 魔が差した――だなんていいわけで済ませていいはずなどないことくらい、百も承知の上で。

「――忍」
「どしたの?」
 ぱち、といつもどおりのかすかなまばたきとともに返される返事を前に、手首をそっと捕らえた力をわずかに強めるようにして、そのまま引き倒すようにベッドの上へと押し流す。
 ほんの一瞬だけ視界の端をよぎったまなざしは戸惑いの色に揺れていて、そこから目を逸らすようにしながら、手慣れた動作で体重をかけるように身体の上へとのしかかるようにして、耳元や首筋に、吐息をかぶせるようにゆるやかに口づける。
「……あまね?」
 戸惑いの色に震われた言葉を塞ぐように唇を重ね合わせながら、スエットの下へと潜らせた掌で肌の上をするりとなぞりあげるように触れる。
 吸いつくような滑らかさに焦がれるままに指先を滑らせながらついばむような口づけを繰り返すそのうち、呼応するかのように胸の高鳴りは加速を増すばかりだ。
 はやる気持ちを押さえつけるようにしながら、少し襟首の伸びたスエットから露わになった首元に舌をはわせるようにして口づければ、戸惑いに揺れた色を隠せないまま空を掻いていた掌は、いつしか引き寄せるようにきつくこちらの背に回されている。

 身体の芯がぐっと深く、熱くなる。あらがいのようのない衝動に流されるままに熱をはらんだ場所に手を伸ばそうとしたその瞬間、焼け付くようにとろりと揺れたまなざしがじっとこちらを捕らえる。
「周、ね? ちゃんと見て、こっち」
 きっとその中に映し出されている自分と同じくらいの――もしかすればそれ以上かもしれない、熱情をゆるやかに溶かしたまなざしが、こちらをまっすぐに捕らえてくれている。
「どしたの? きょうなんか積極的だよね。周からしたいって言ってくれるのってふだんないもんね、ちょううれしい」
 微かに震わされた指先は、すっかり手慣れた手つきで、あおるような滑らかさでさわさわと耳のふちをなぞりあげる。
「ね、どんなやらしいことしてくれんの? 明日休みだもんね、いっぱいしよ? ね?」
きつく引き寄せるように首筋に腕を絡めながら囁かれると、如実にこちらを誘うその仕草とは裏腹に、強引に込めたはずの力は、頼りなくするりとほどけていくばかりで。
「忍……」
 ふかぶかと息を吐き出しながら、少しぎこちなく震わされた指先で髪を漉くようにする。露わになったやわらかな耳は微かに赤く染まっていて、うんと悪いいたずらを誘うように否応なしにこちらの心をくすぐってくるのを、いまさらのようななけなしの理性でぎゅうぎゅうと抑えつける。
 こちらの事情など知ってか知らずか、うんと幼い子どものような無邪気さでうれしそうに瞳を細めて笑いかけながら告げられるのはこんな一言だ。
「ね、周。好きだよ?」
 ……なんでそれを今言う、しかもこのタイミングで。
 それでも、微かに潤んだように見える瞳は、その奥で滲んで膨らんだ柔らかな光は、嘘なんてかけらひとつもない、まっすぐな想いだけでひたひたと満たされているのは確かで。
「――忍、」
 観念した、としか言いようのないような心地で、ゆるゆると腕に込めた力を弱めるようにしたのち、周は答える。
「なんでちょっとくらいはいやがんないんだよ、おまえは」
「……なんでそうなるかな?」
 得意げな笑顔とともにかけられる言葉を前にすれば、じわじわと胸のうちではあまやかな息苦しさがせり上がっていくばかりで。

 いつでも気安く笑って、余裕ぶった態度でこちらを翻弄するばかりで――だからこそ、時には惑わせるようなまねをして反応を伺って見たかっただなんて、そんなこと。
 どんないいわけを用意したって赦されるわけがないのはわかっていたけれど、それにしたって。

「そっかぁ、どやって誘えばいいかわかんなかったんだよね? そゆときはさぁ、ちゃんと言ってくんないとだめだよ? でもさっきの周すっごいかっこよかったよ。ね、最初っからさっきみたいにしてくんない? そんでさ、いっぱい気持ちいいことしよ? ね?」
 いつもみたいに、遠慮なんてかけらもない様子でくしゃくしゃと髪をかき回しながらしきりに吐息をかぶせるように口づけを落とされれば、火照らされた身体の芯はまるでろうみたいにとろとろと熱く溶かされていくばかりで。
 ――心の底から反省しているのでここで仕切り直してやめにしようだなんて、いまさら言えるわけあるはずもない。

 すり、とスエット越しに熱の在処を指先であおるように辿りながら、周は言う。
「……おまえさ、なんでこうなの」
「決まってんじゃん、ちゃんと責任とってよね?」
 すり、と、こちらの動きを追従するかのようなしなやかさで、指先を滑らされる。
 滑らかな手つきが辿る熱の在処にはよく見知った情動がたっぷりと蓄えられているあたり、なんというか、まぁ。

「おい忍」
「なに?」

 とろとろと蜂蜜かなにかを煮詰めたような、こらえきれない甘さと欲望を浸したまなざしがじいっとこちらをとらえてくれている。
 少しもひるんだりなんてしないその態度が、周にはただ途方もなくうれしい。

「ちゃんと責任とるから、あとで後悔すんなよ」
「するわけないでしょ?」

 ひとまずは、とばかりに、生意気な口を聞く唇を塞ぐように吐息を奪う口づけをかぶせてやる。
 貪るように重ね合わせた舌はたちまちに周を翻弄するかのようにぎゅうぎゅうとからみついて、触れたその先からあまい痺れをぐんと深く加速させる。


 世界一ばかで、世界一貪欲で、世界で一番かわいい。
 それが、周の恋人だ。





診断メーカーで「無理やり押し倒す」ってお題が出たのを見て「忍は無理やり押し倒されたら寧ろ喜ぶよね」って思ったって言うそれなんですが、魔が差したのはわたしです。

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