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調弦、午前三時

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Letters

「ジェミニとほうき星」祈吏とマーティンのあいだでつながれたもうひとつの『想い』のお話。
同人誌Lettersからの再録。







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 宝物があるから、見てほしいの。そう言って双子の姉から手渡されたのは、化粧箱にびっしりと詰まったたくさんの手紙だった。


「......見てもいいの?」
「いいって、本人から言われたから」
 得意げな口ぶりに促されるままに、少しかさついて皺のよった封筒からするりと便箋を取り出す。
 よく見覚えのある、ブルーブラックのインクで記された少し跳ね上がった筆跡────それでも、よく見知っている少し崩した独特な筆記体のあの字体とは違う、ややぎこちない、ひらがなが多めの日本語で綴られているのが、なんだかおかしい。
 ところどころがおぼつかなく、だからこそよりいっそう飾り気のない想いが込められていることが手に取るように伝わる文章は、間違いなく彼によるものだ。
「日本語がね」
 ちら、とこちらの表情と手元を交互に見やるように視線を揺らしながら、祈吏は言う。
「話すのはカイのおかげでだいぶ覚えたけれど、読み書きはやっぱりなかなか覚えられないって言ってて。カイに内緒で覚えてびっくりさせたいから、よかったら手紙のやりとりをしてくれないかって」
「......いつの間に」
 戸惑いを隠せないこちらを前に、うんとやわらかく得意げに微笑みかけるようにしながら返されるのは、こんな一言だ。
「ほら、大学に入って少しした時。ゆっくり話がしたいってSkypeでやりとりしたことがあったでしょ。あの後も何度か話して、その時言われたの。わたしだって、マーティンと仲良くなりたかったし」
 あんまりにも「らしい」そんな口ぶりに、言いしれようのない想いがふつふつとみちみちていくのを抑えきれない。
「......僕はそっちのけで?」
「祈吏にないしょで仲良しになってたのはそっちじゃない」
 いじけたような物言いに、心の端をたちまちにくしゃりとやわらかに捕まれてしまうかのような心地を味わう。
「......それは、その」
 口ごもるこちらを前に、ふわりと打ち消すかのように首を横にそうっと降る仕草と共に祈吏は答える。
「仕方ないわよね、男の子だもん。なんでもお姉ちゃんに話してって、いつまでもそういうわけにはいかないもんね」
 傍らで壁にもたれかかった姿勢のまま、膝の上に置いた宝箱の中身をかさかさと探るようにしながら、祈吏は続ける。
「初めはね、身の回りのことが多かったのよ。学校でなにを勉強してるのかとか、お父さんやお母さんや友達のこと、身近にあったこと、季節ごとの行事のこと。クリスマスとかイースターとはハロウィンとか、ああ、やっぱり外国って違うんだなぁ、おもしろいなあって。これでいいのかな、つまんなくないのかなって想いながら、こっちはこっちで身の回りのこととか、わたしから見たカイのことを書いてたの。時々ほかでもやりとりしてたけれど、手紙がいちばんおしゃべりだったかな。ほんとうに些細なことでもすごく丁寧に聞いて、喜んでくれて。ああ、優しいんだなって思って────」
 どこか遠くを見るように、まぶしげに瞳を細めるようにしながら告げられる言葉はこうだ。
「それが────変わったのは、カイがイギリスに行って、ふたりで一緒に過ごすようになってから。カイはこうしてる、ああしてるって、直接教えてくれること以上のことを、マーティンの瞳から見た姿で教えてくれて。なんだかね、あたりまえだけれどすごくびっくりしたの。わたしの知ってるのと違うカイが、手紙の中にはたくさんいて。でも、ちゃんとカイだってわかるの。すごいことだなって思った。わたしやみんなの知らないカイが海の向こうにいて、大事な人とこんなに毎日を大切に生きてる、こんなにも大切に思い合える人といるんだって。それが手書きの手紙でこうやって教えてもらえるなんて、すごいことだと思った。あれだけの距離と時間を超えて、こうやってちゃんと手元に届けてもらえるだなんて、奇跡みたいだなって」

 届いた時期ごとにきちんと整理されて保管された手紙は少しよれて、それが幾度と無く繰り返し開かれてきたことが手に取るように伝わる。
 季節ごとのうつろい、変わりゆく日々の暮らし、生まれてまもない甥っ子のこと────彩り鮮やかに綴られていく日々は束の間の「ふたり」の月日を迎えた頃から、少し違う色を帯び始める。
 月日と共に、少しおぼつかなかった筆跡はいつの間にか滑らかになり、語彙は増えはじめ、淡く滲むような色彩は少しずつ色濃く、より鮮やかさを得始める。
 そして、いつしか────彼の映し出す視界の中には、それを傍らで見つめていた自身の影が少しずつ描かれるようになっていく。
「────はずかしいね、なんだか」
「いいじゃない、照れなくたって」
 横からそうっとのぞき込むようにして、よく見知った様子で便箋に綴られた文面を指し示しながら祈吏は言う。
「ほら、ここ。やっぱりカイの話だけじゃ教えてもらえないことがたくさんあるんだなあって」

 綴られている、日常の些細な顛末────祈吏や家族にも話したことなのだから、それほどはずかしいことという訳でもないのだけれど────を前に、さぁっと微かに耳が熱くなるのを堪えきれない。
「文章じゃなきゃ言えないことってあるのよね、やっぱり。ほら、メールってやっぱり考えてから書いて、何度も消して書き直してが出来るじゃない。そのぶんもあってか、手紙のほうがもっと無防備っていうか......あんまり気取った言い方にしてもわかりづらいだろうからって思って書くうち、誰にも話したことがないこともどんどん書きたくなってる自分に気づいて。なんていうか、すごく安心するんだもん。ああ、きっとこういうところが好きなのねって、そのうちにわかるようになって」
 部屋着にしているたっぷりとゆるやかな生地のロングTシャツの裾を指先でなぞるようにしながら、祈吏は言う。
「カイのこと取らないでよって、ほんとうはずっと思ってて────わたしの方が知ってるのに、わたしの方が好きなのにって意地ばっかりはってるくせに、強がって平気なふりしてた自分がばかみたいだなって思うようになって。だって、どれだけカイのことが大事なのかも、カイが彼のことをどれだけ思ってるのかも、ぜんぶここに詰まってるんだもん。ああ、こういうことが知りたかったんだ、カイがはずかしがって教えてくれないことをマーティンは教えてくれようとしてるんだなって」

 照れくささからぎこちなく視線を逸らそうとするこちらを前に、少しふちのにじんだあたたかなまなざしをじいっと向けるようにしながら、祈吏は答えてくれる。
「おんなじなんだなぁって思ったの。大好きで大切だっていうのも、みんなおんなじなんだって。そういう人と出会えて、一緒に生きようとしてるってちゃんと話してくれたカイのこと、ますます大好きだなって思ったの」
 少しだけ震わせた指先に、ひとまわりちいさくて華奢な自らのそれをそうっと重ね合わせるようにしながら、世界一大切な女の子は答えてくれる。
「カイのことが大好きでほんとうによかった、カイのことも、カイが選んだ人のこともほんとうに大好きだなって」
「いのり......」
 ほんの少しだけためらいながら────それでも、確かな思いが届くようにとそう願いながら、重ね合わせた指先をそうっとからめ取るようにして、きつく握りしめる。やわらかくて華奢で頼りなくて――すっかり馴染んだ彼の「それ」とは違う、繊細なその感触に、ぐっと胸の奥がつまされるかのような心地に襲われる。
 ガラス細工で出来た花みたいに繊細で、壊してしまわないか不安で────いつしか手を伸ばすことすら恐れるようになっていたのが、嘘みたいだ。
 だって、こんなことで壊れたりなんてしない。大切に大切に、ただぬくもりのありかを伝えあうみたいに優しく触れあえばいい、ただそれだけだった。
 そんなささいなあたりまえのことなのに────だからこそ、こんなにも長い時間を費やさなければ、気づくことが出来なかった。


「祈吏は────」
 震わせた唇からため息まじりにそうっと吐息を洩らすようにしながら、僕は答える。
「マーティンのこと、きっと好きになってくれるって、そう信じてたよ。祈吏ならきっと、マーティンとだってすぐに仲良くなれるって。だから、直接会う前も――マーティンが祈吏と話したって聞くたび、内心はらはらしてた。ふたりとも大事で、大好きだから......僕だけ置いて行かれたらどうしようって、不安で」
「......そんなこと考えてたの?」
 くすくすと声を立てるようにしながら、大好きなあの、花びらがこぼれ落ちるような笑顔がこちらへと降り注ぐ。どこか得意げな色を宿したそれを向けられるその度、呼応するように僅かに軋んでいた胸の痛みがいつの間にかこんなにも薄れているのが、心底不思議だ。
「心配性だなぁ、カイは」
 ふわりと額にかかった前髪を払い、そのままやわらかにそうっと、子どもをなだめるようなたおやかさでなぞりあげながら祈吏は答える。
「でも、そうじゃなくっちゃカイじゃないよね。寂しがりであまえんぼうでいじっぱりで、それに、いつだってすごく優しい」
 にっこりと得意げに、「お姉ちゃん」の顔をして笑いかけるようにしながら、祈吏は続ける。
「安心したのはほんとうよ。ああ、カイは大丈夫なんだなって。いつのまにか知らない男の人になってるだなんて、そんなことないんだ。ちゃんとわたしの知ってるカイのまんま、それでもちゃんと、前に進んでるんだって」
「あのね、カイ」
 微かに震わせながらこちらに触れていた指先をそうっと離し、ほんの僅かにだけ潤ませたように見える目尻をぎゅっと下げながら、祈吏は答えてくれる。
「祈吏の弟になってくれて、ほんとうにほんとうにありがとう」
「祈吏......、」
 続く言葉を封じるように、強気な笑顔がそうっと覆い被さる。少しだけ熱くなった瞼にぎゅうっと力を込めるようにして見つめ返せば、一歩もひるまない優しいまなざしがこちらを捉えてくれている。
 ほら、やっぱり敵いっこあるわけない。こんなにもあたたかくて、こんなにも優しい。「守ってあげる」だなんていつだって口先で、その実、守られていたのはいつだって僕の方だった。
 あんまりまぶしくて、目を逸らしたくなるほどで――それなのに、ずうっと逃げずにいつだっていちばんそばで、僕を守ってくれた。いままでだってこれからだってきっと、世界で一番大切な女の子だ。
 微かに震えた唇をほんの僅かにだけ噛みしめるようにして、ぎゅっと精一杯の笑顔を浮かべながら、僕は答える。
「あのね、祈吏」
 確信を込めるように、揺れるまなざしをじっと見入るようにしながら僕は答える。
「祈吏のことが大好きだよ。いままでだってこれからだって、ずっとずうっと大好きだよ」
 たったひとりの、生まれた時からずうっとそばに居てくれた大切な女の子で――それはきっと、この先どんなに離れた場所で生きていくことになったとしても、その時に隣に居るのがいつの間にかお互い以外の違う誰かになっていたのだとしても、これから一生涯ずうっと変わったりなんてしない。
「祈吏のこと、お姉ちゃんだと思ったことなんてほとんどなかったよ。だって、祈吏は祈吏だから────なんで『家族なのに』なんて笑われたりしなきゃいけないんだろうって、すごくいらいらした。祈吏のことが大事なだけなのにって。どうしようもなく怖くて、逃げ出したくてたまらなかった。そのせいでたくさん祈吏のこと、嫌な気持ちにさせたのだってわかってる。祈吏だけじゃないよ、マーティンだって、春馬だって、きっとたくさん傷つけた。どうしてそんな風にしか出来ないんだろうって、自分のこと責めて、でも、そんなことじゃなにも変わらないのだってわかってて」
「カイ......」
 堰を切ったようにあふれ出していく感情に呑み込まれてしまわないようにと、ぐっと深く息を呑み込む。
 大丈夫、大丈夫だから。なにも怖がらなくたっていいから。
「ちゃんとわかったんだよ。なにも恐れなくたっていい、なにも捨てなくたっていいんだって。僕だけの力なんかじゃなかった。自分ひとりで立って、歩いていけるなんてことなかった。でも、それでいいんだって。大切な人たちがいて、その中にちゃんと僕の居場所があって────そうやってみんなに支えてもらった力で、いつか大事な人を守れるようになりたいって。それまでずっと一緒にいたいって。大好きだよって、ありがとうって、そう伝えることはちっとも悪いことなんかじゃないんだって」
 心の奥が、音も無くほろほろと溶けていくような錯覚に襲われていた。ほら、ちゃんと言えた。ずっと胸の奥を塞いで、膨らんでいくにつれて重石を載せて抑えつけることばかり考えて────いつしか形を変えて、溶けて消えてしまったと思っていた想いは、こんな形でずっと、手渡すことが出来る日を待ち望んでいた。
「祈吏、」
 確かめるように名前を呼ぶ。誰よりも大切な、いちばん側で守り続けてくれた女の子のことを。
「ずっとずっと、守ってくれてありがとう。祈吏ときょうだいになれて本当によかったって、そう思ってる。祈吏が居てくれなきゃ、いまの自分になれなかったよ」
 震わせた指先を、確かめるようにそっと絡め合う。ほら、何にもおかしなくなんてない。こんなにも大切に想い合っている、ただそれだけなんだから。
「これから先、なにがあったって僕たちは変わらないよ。祈吏が僕をたくさん守ってくれたみたいに、いつか僕も、祈吏のこと、守れるようになるから。だから────」
「......なんで、そんなこと」
 たっぷりと潤ませた瞳で、それでも、少しも怯まないままじっとこちらを見つめるようにしながら、祈吏は答えてくれる。
「カイは祈吏のこと、もうたくさん守ってくれたでしょ?」
「そんなことないよ、いまだって泣いてるじゃない」
 震わせた指の先で、とんとんとなだめるように肩をさする。やわらかくて、頼りなくて、壊してしまわないかずっと不安で────でも、そんなことちっともなかった。大切に大切に、壊してなんかしまわないように優しく手を伸ばしてあげればよかった。ただそれだけのことに、ずっと気づけなかった。
「......わかってないよ」
 強気にじっと、こちらを見上げるようにしながら祈吏は続ける。
「うれしくって泣くことだってあるんだよ? だからいいの、ね?」
「じゃあ祈吏が泣きやむまで一緒にいるよ。それでいいんだよね?」

 少しだけ熱くなった瞼に力を込めるようにしながら、ゆっくりと背中に腕を回し、抱き留める。
 うんと幼い子ども同士のころに、そうしたみたいに。ただお互いを慈しみあうためだけに。



 好きでいられて本当によかった。こんな風に向き合えるようになれる日を迎えられて、ほんとうによかった。こんなにもあたたかい気持ちに出会える日がくるなんて、ずっとずっと思っていなかった。

 たくさんの感情の欠片を、パッチワークみたいに繋ぎ合わせて歩んできたことでたどり着いた「いま」がある。
 そのかけがえのないピースのひとつ、彼と祈吏の心を繋げてくれたたくさんの手紙を前に、僕は気づかれないようにそっと、息を吐く。

 水くさいよね、それにしたって。僕だけずっと仲間外れにして。今度会ったらちゃんと話すから、そのつもりでいてね? それとも僕も、うんと長い手紙にでもすればいい? 伝えなきゃいけないことが、こんなにもたくさんあるから。

 ゆるやかに感情を手放していくようにしながら、静かに息を吐き出す。
 こんなにもあたたかくて、こんなにも寂しい。ずっとほしかった宝物が、胸の中できらめいている。












 久しぶりのお手紙になります。

 こないだは少しだけれど声が聞けてうれしかったです、元気そうで安心しました。(ほんとうは寂しいんだろうけれど、ごめんね)(わたしだってカイがいないあいだは寂しいので、おあいこだと思ってください)

 話してくれたとおり、ずっと大切にしていた宝物をカイに見てもらいました。すごくびっくりして、なんで黙ってたの? なんてちょっぴり不機嫌そうでした。かわいいでしょ。ああ、カイらしいなあってなんだかすごくうれしくなりました。
 いままでたくさん話をしたつもりだったけれど、まだちゃんと話せてなかったことが、伝えなければいけないことがたくさんあったんだなって、改めてそう気づきました。教えてもらえたことに、すごく感謝しています。
 わたしが知っているつもりでいて、それでいて気づいてあげられなかったたくさんの大切なことを、あらためてたくさんたくさん知ることが出来ました。
 正直言ってちょっと悔しいけれど、それでも、ずうっとずうっとうれしくて、幸せだなと思いました。

 ほんとうはちゃんと最後まで笑って「ありがとう」と「よかったね」を言わなきゃいけないのに、少しだけ泣いてしまいました。
 たくさん慰めて優しい言葉をかけてくれて、カイは弟だけれど、お姉ちゃんが守ってあげなきゃいけない小さな男の子なんかじゃなくて、優しくて立派な男の人なんだって、改めてそう思いました。
 カイが優しくていい子なのはずっと知っていたし、変わらないけれど、ちょっぴりいじっぱりでつよがりで照れやで頑張りやさんのカイが、不安なことや迷っていることをちゃんと話してくれるようになりました。
 あなたのおかげだから。あなたのことがほんとうに大切で、これからずっと一緒に生きていたいと思っているからと、なんどもそう話してくれました。

 カイにもし大切な人が出来たってそう教えてもらえたらきっとすごくうれしいし、カイが好きになる人なら絶対好きになれるはずだとそう信じていました。
 でも、その反面すごく不安でした。わたしとカイは家族で、生まれてきた時からずっとお互いが大切な相手で、ただそれだけなのに。”男の子と女の子”だからって、笑われてしまうことが、すごくすごくショックでした。
 わたしはカイが好きで、カイもわたしのことを大事に思ってくれていて。その気持ちを手放さなければ大人になれないなんて、そんなの絶対おかしいと思いました。それでもどこかで、カイが選んだ人に出会えたならそのことを心から祝福してあげないと、同じように、わたしもいつかカイとは違う大切な人に出会うのかもしれないから、その時はちゃんと迷わずその人の手を握れるようにならなくちゃって、ずっとそう思っていました。

 イギリスから帰ってきてから、カイの雰囲気は少しずつ変わってきて。そりゃあ思春期の男の子だもの、家族に話せないことだってあるだろうし(わたしにだって、家族や友達に話していないことがたくさんあります)、でも、いつか話してくれる日がくるだろうと待っていました。
 前にも話したけれど、ずっと内緒にされていたのはすごくショックでした。春馬くんには先に打ち明けたと聞いた時には、なんでお姉ちゃんにいちばんに話してくれないのって、少し怒りました。(いまならわかります、家族だからなかなか話せなかったことも、打ち明けるタイミングを気遣ってくれたことも)
 たくさん迷って、傷ついて、不安になって。それでも、「この人と一緒に生きたい。幸せになりたい」と思える人に出会えたこと、それを教えてくれたことは、すごくすごくうれしかったです。
 うんと強くてうんと優しいカイのことが、ますます大好きになりました。


 どうしてわたしはカイと双子のきょうだいだったんだろうって、正直言って何度もそう思いました。

 歳の離れたきょうだいだったら、もっとちゃんとした「お姉ちゃん」になれたのかなって、頼りないお姉ちゃんの自分がはずかしくてみっともないと思いました。
 それでもカイは、頼りないお姉ちゃんのわたしをとても大切にしてくれて、たくさんたくさん守ってくれました。わたしがカイのことを守ってくれたと、そう言ってくれました。そのことを教えてもらえた時、カイのお姉ちゃんになれて、きょうだいになれて、ほんとうによかったと思いました。


 大好きで大切なカイのことを、わたしには出来ない形でたくさんたくさん守ってくれて、ほんとうにありがとう。
 カイと繋いだたくさんの気持ちを教えてくれて、ほんとうにありがとう。
 あなたに出会えたことを、心からうれしく思っています。

 なんだかとっても長くなってしまいました。少しはずかしい気もするけれど、いまいちばん伝えたかった気持ちです。あなたと家族になれて、ほんとうにうれしいです。
 
 たくさん優しい気持ちをくれて、ほんとうにほんとうにありがとう。遠い場所で暮らしているからなかなか会うことが出来ないのが寂しいですが、またいろんなことを話したいです。
 これからもどうぞ、お元気で。

 世界でいちばん大好きなたったひとりのお兄ちゃんへ 愛を込めて

祈吏より



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