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調弦、午前三時

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花束をあげる

りんちゃんとあましののホワイトデー



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 りんちゃんへ
 バレンタインのおかえしです。
 いつもたくさんあそんでくれてありがとう。
 にこにこえがおでげんきをいっぱいくれるりんちゃんがだいすきです。
 これからもりんちゃんとなかよしでいられたらとってもうれしいです。
 ふたりでプレゼントをえらびました、よろこんでもらえたらうれしいです。

 あまねとしのぶより



「うふふふ、ふふふふ」
 こらえきれないにこにこ笑顔を浮かべながら、鏡の前で何度もおすましポーズを取ってみせる。
 3月14日、ホワイトデー。
 大好きなボーイフレンドからのお返しを身につけてますますすてきなレディになった姿を見つめながら、凛音は思わずうっとりとため息をもらす。

『バレンタインデーは大切な人に心を込めて感謝の気持ちを伝える日です』

 大好きなボーイフレンドは凛音が手渡したチョコレート(ちゃあんとこの日のために取っておいたお小遣いで買ったことがなによりもの自慢だ)のお礼をおぼえてくれていて、一ヶ月後のこの日にとっておきのプレゼントをくれた。
 金色のリボンでゆわえたラッピング袋から出てきたくまちゃんとレースの模様が入ったかわいい手書きのメッセージカードに、お花や猫ちゃんの形の色とりどりのクッキー、それに綺麗な若草色のリボンのカチューシャ!
 たくさんのとびきりすてきなプレゼントを目にした時のおどろきとよろこびを思い返すたび、おむねの奥からぽかぽかして、ぱあっと満開のお花がいくつも一度に開いたような心地になったことはいまでも忘れられない。
 ふんわりあまいバターの香りのするさくさくのクッキーはねこちゃんと女の子の絵が描かれたかわいい缶に入っていて、食べ終わったあとに綺麗に洗えば宝物入れにできる。お手紙はまだちいさい凛音がひとりでも読めるように大人なのに優しい字で書いてくれたし、春らしいきれいな若草色のりぼんには凛音の大好きなミモザのお花が刺繍されている。
「すごーい! かわいいー!」
 とびっきりのニコニコ笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねてはしゃぐ品音を前に、いつものあのとびっきりの優しいにっこり笑顔で忍くんは答えてくれる。
「リボンは周くんが選んでくれたんだよ、りんちゃんはミモザのお花が好きだからきっとよろこんでくれるよって」
「おぼえててくれたの?」
 いっしょにお散歩に行った日の何気ないやりとりが、みるみるうちに脳裏に浮かぶ。
「りんちゃんは優しい色が似合うからきっとすごく似合うだろうねって忍くんも言ってくれたんだよ」
 まだちいさい凛音に目線の高さを合わせるようにしゃがみこんだまま、ちょっぴりはずかしそうに伝えられる言葉におむねの奥がぎゅうっとなる。
 大好きな人たちがこんなにも凛音のことを思ってくれているだなんて、凛音はなんてしあわせな女の子だろう。
「あまねくん、しのぶくん、ほんとにほんとにありがとう」
「どーいたしまして」
 はずかしそうに笑ってくれるあまねくんの隣には、うんと得意げにニコニコ笑ってくれる忍くんがいる。
 忍くんが笑ってくれる、それだけで凛音もあまねくんもおなじくらいにうれしい。
 凛音がうれしくて笑えば、忍くんとあまねくんもおなじだけよろこんでくれる。
 大好きで大切な人たちと心が通じ合うのは、こんなにもこんなにもうれしい。


「お花の妖精さんみたいね」
 お買い物に出ていたママに見せに行った時、まっさきに言ってくれた言葉がそれだった。
 大好きなボーイフレンドとのデートだから、とママに相談していっしょに選んでもらった黒いチェックのフリルがついたブラウスとデニムのかぼちゃパンツにもお花のりぼんはよく似合っていて、りんをますますおしゃれですてきなレディに変身させてくれている。
「このおりぼんでまたデートしようねってやくそくしてくれたの」
「そっかぁ、じゃあまたうんとかわいくして行ってびっくりしてもらわないとね?」
 パチリ、とウインクをしながら答えてくれるママのとびっきりの笑顔を前に、ぽかぽかとおひなたぼっこの気分になりながらぎゅうっと抱きつく。
 パパだってだあいすきだけれど、ママは凛音とおんなじ女の子だからおとめの気持ちをこんなふうにいつだって誰よりもわかってくれるところがますます大好きだ。
「ねーねー、りんー、パパとはデートしてくれないの?」
「うーん、どうしよっかなぁ」
「えーっ」
 わざとらしく渋るようにしてみせれば、途端にがっくりしたようすのお返事が返ってくる。
 パパのこういうわかりやすい態度はなんだかとってもかわいい。
「うそだよー」
 にっこりと得意げに笑いながら、ぎゅうぎゅう抱きついて、いいこいいこをしてあげるみたいに頭を撫でる。
「パパのことも大好きだもん、パパもまたいっぱいデートしようね」
 こんな時、パパには悪い気持ちはもちろんあるけれど、凛音はちょっぴり得意げな気持ちになってしまう。
 パパが凛音を大好きで、やきもちを焼いてくれている証なのがわかるからだ。

(あまねくんだって忍くんが大好きなんだからりんと忍くんがなかよしなのをほんとはやきもちしてるのかなぁ。おとなだからがまんしてくれてるだけなの?)

 ちょっぴり複雑な気持ちを感じながら、大好きなパパのおおきくてあたたかい掌の感触にうっとりと酔いしれるようにまぶたを細める。



 *

「りんー、そろそろおふろにはいりなさい」
「はあい」
 とびきりのいい子のお返事をしてから、アクセサリー入れにお花の妖精のりぼんを丁寧にしまう。
 こんなにかわいいからお友だちみんなにも見せたいくらいだけれど、しばらくはないしょにしておこう。
 みんなには教えてあげないとっておきのひみつをもっていることだって、すてきなレディの条件のひとつなのを凛音は知っているからだ。



 3/14 はれ
 あまねくんとしのぶくんとおおきいこうえんででーとしました。
 おはながたくさんさいてるこうえんで、ままがすいとうにいれてくれたこうちゃをのみながらパンやさんのパンをおひるにたべました。
 パンジーとすみれとチューリップがたくさんさいててかわいかったです。
 りんはパンジーはみずいろがかわいいとおもいました。
 チューリップはみんなかわいいからなにいろかえらべないです。
 かわいいわんちゃんもおさんぽしていました。

 ホワイトデーなのであまねくんとしのぶくんはりんにおかえしのプレゼントをくれました。
 かわいいかんかんのクッキーとおはなのししゅうのりぼんです。
 うれしいからおれいにあまねくんとしのぶくんとぎゅうってしました。
 あまねくんはりんがぎゅってするとちょっとはずかしかったみたいです。
 りんもちょっとどきどきしました。
 あまねくんはちょっとてれやさんなのがかわいいです。

 おうちにかえったらぱぱもほわいとでーのおかえしにまかろんをくれました。
 おかしがたくさんなのでぱぱとままとりんのさんにんでなかよしでわけっこすることにしました。
 ぱぱもままもりんがもらったおりぼんがかわいいねっていってくれました。
 ぱぱはりんがますますかわいくなってちょっとさびしいみたいなのでこんどはぱぱともデートするやくそくをしました。
 りんはぱぱもままもあまねくんもしのぶくんもみんなだいすきだからじゅんばんになかよくできたらいいなっておもいます。

(でもしのぶくんがいちばんとくべつにだいすきなのはちょっとだけないしょです)


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